持丸 岡 正太郎さん(大4生)
猿と蟹が、
「餅搗こう」て言うて、搗いたぎにゃあ、
猿がその、蟹ゃのろかんじゃい、
「お前(まい)その、臼を返してこい」て、蟹に言うたて。
そいけん猿は、
「杵返してくっけん」と。
猿は借りた杵ばもう、返しにタッタタッタ走って、返してきて、
もう、蟹はノロノロして太か臼ば転がして返しに行くやろう。
暇のいんもんじゃい、そのうち搗いた餅ば全部、
その、袋に入れて、柿の木登ってですね。
そうしたぎにゃあ、帰ってきたぎにゃあ、餅がいっちょんなかろうがあ。
そいもんじゃい、見たぎにゃあ、
「おいしかねぇ、おいしかねぇ」て、声のすんもんじゃい、
ちょっと裏の柿の木ば見たぎ
登っとってぇ。そして食べよったあ。そいけん、
「一つ私にもくれんね」ち言(ゆ)うぎにゃ、
「いや」ち言(ゆ)うて、くれんて。
そうして、ブランブラン揺りながら食べよったて。
そうしたら、柿の木の枝が、脆かもん
じゃい、ポキッと折れて、ドサーッと袋が落ちてしもうたて。
そいもんじゃい、蟹が
おろたえて、その袋ば蟹の穴ん中(なき)ぁあ入(はい)り込うだて。
そうしたぎにゃ、その、
今度が猿が食べられんもんじゃい、蟹に、穴の横に行ってから、
「俺も一つくれんか」て言うたが、
「いやよ」て。「あんたもくれんやったもん。くれん」て。
「そんならば、お前(まい)、くれんならば糞(うんこ)すっぜ」て言うて、その、
「しきんならしてんのう」て言うて、
その、蟹が言うたもんじゃあ、穴ん所(とこ)に糞ばしたて。
そいで、はそんだもんじゃい、猿の尻は赤(あこ)うなったて。
そいばあっきゃ。
(出典 三根の民話 P87)