神埼町横武東 馬場崎タツさん(明12生)
爺さんと婆さんとなた、椎拾いや行かしたて。
そいぎぃ、椎拾いや行かしたぎぃ、
あの、婆(ばば)しゃんのなた、いっぴゃあになったばってん、
お爺さんた溜らんてっちゃん。そいぎい、
「お天神さん、お天神さん。私ゃ、今晩一晩で良かけん、こなちゃ泊めてくんさい」て、
お爺さんが言わすてっちゃん。そいぎぃ、
「泊まっとはやす易かことばってんのう、ここは鬼どんが浮立打ちぎゃあ来っ」て。
「そいけん、そん時ゃあ、『コケコッコー』て、言わんばなん」て。そいぎあの、
「そぎゃん言うけん」ちて、一晩泊まったてなた。
そしてその、まあ、鬼どんが、
「ドンドンヒュウ、ヒュウドンドン」て、来ってっじゃんなた。そいぎにゃ、
「コケーコウー」と、言わしたて。
そいぎぃ、何でんかんでん置(いっち)ぇて走ったて。
そうしたぎまた、隣(とない)の欲望爺さんのなた、
また明くる晩行かしたて。そしたいば、
「そがん言え」ち、言うてなた。
クスクスと笑(わろ)うたて。そいぎぃ、
「こん畜生(ちきしょう)、わが夜(よう)べも俺(おい)ば
騙(だみ)ゃあて、今日(きゅう)もまた、そぎゃん騙されんぜぇ」
ちて、言うてなた。そして、お爺さんばいち食うたて。
人の真似してなた、欲ば出すけんなた、欲ば出すぎんと言うこと。
こいばっきゃあ【これでおしまい】。
[大成二一二 栗拾い AT四八〇]類話
(出典 未発刊)