神埼町横武 馬場崎タツさん(明12生)
むかし、男の来っとちゃ。
そいからなたぁ、
小僧さんのおらすもんなたぁ。
そいぎその、小僧さんのおらすぶんにゃ、
そりゃ和尚さんの帰って来んさっぎにゃあ、
瓶ん中(なきゃ)あ隠るってんたんたぁ、その男が。
そいぎもう、瓶ん中から、
「あの鐘ば討ってくいろ。あの鐘ば売ってくいろ」と、
その男が言うもんなたぁ。
そいぎなたぁ、そいば売らんばこてや、
短気は損気ちゅう話から聞いたとじゃんなたぁ。
そいぎなたぁ、そいけんその、
和尚さんが、しまいは勝ちんさったろう。
短気は損気で。
ありゃ帰えらさっちゃ、亭主がくさんた。
そして道でなた、ほんにお話の上手な人に会いなったて。
そいぎ、そいぎ、そいばいっちょ聞くぎ、五円てっちゃんなた。
むかしの五円なた。
そいからまた、あの、あぎゃんとまた、
まいっちょ二つ聞くぎなた、また十円になっじゃんかんたぁ。
そいぎ、短気は損気と一番口言わすぎ、そがそこ五円ない五円なた。
そいから、家中(なき)柱の無か家に泊まるべからず。
こう、山の木がこうなっほっちゃって。
そぎゃんとにゃ家に泊まったことならんて。 (未完)
(出典 未発刊)