三田川町荻原 山口秋信さん(大7生)
茗荷ば食ぶっと、ほんに忘れぽくなっちゅう話ですね。
そいで、ある旅人がその、旅館に泊まったぎにゃあとにゃ、
えらい品物(しなもん)か何(なん)か持っとったでしょうね、旅人が。
そいもんじゃけん、茗荷ば食わしたて。
その、何か、物忘れさしゅうでですね。
そして、その品物ば、ごっそい取ろうと思うたらしいですよ。
そいで、何の料理でも茗荷の入ってからですね、
茗荷ばっかい食べらしたという話ですよ。
そうしたら、そのあくる日、もう何か、その客人が帰ってからですね、
女中さんがおろたえて行ったけど、何(なん)でんなかそうですもんね。
そうしたら、何もその、その女中さんがですね、
わがその、宿賃取ると忘れてしもうたて。
そんな話を聞きましたけれど。
[大成 茗荷女房 三九二]
(出典 未発刊)