神埼郡吉野ヶ里町小川内 武広 勇さん(年齢不詳)
むかし、むかし。
あるところに跛(ひんば)と、鼻ぽんと、盲の三人がいたと。
ある日、その三人が連れ立って旅に出かけた。
ちょうど、あるところまでやって来たら、村公役があっていたそうな。
すると、三人とも片輪者で、公役の人々からもの笑いになるのは恥しいものだから、
「そこをどうして通るか」と、お互いに話し合った。
その結果、三人の片輪者は、
「それじゃ、われわれがいま話し合ったとおりにして、ここを通りぬけよう。
人さまに非常に恥しいけれども、とにかく通りぬけよう」
と言って、一番はじめに跛が、
「あぁ、おれは糞踏んだ。あぁ、おれは糞踏んだ」と言って、通りぬけた。
だから跛ということが公役の人々には気づかれなかった。
二番目には鼻ぽんが、
「あぁ、臭かにゃあ。あぁ、臭かにゃあ」と言って、通りぬけた。
それで鼻ぽんということが公役の人々には気づかれなかった。
こんどは最後に盲が、
「あぁ、見んがまし。あぁ、見んがまし」と言って、通りぬけた。
それで盲ということが公役の人々に気づかれなかった。
三人の片輪者は、笑われないで無事に村公役の人々の前を通ることができた。
こいが先ゃあ、まぁっきゃあ[これでおしまい]
(出典 佐賀の民話第一集 P84)