伊万里市波多津町木場 松下 栄さん(大元生)
殿様から、
「焼き縄を作ってくれ」と言われて。
そして親父さんば姥捨山に連れて行くとです。
息子がいっちょう家ば建たんとかてぇ。そいで尋ねらしたら、
「俺(おれ)ば捨てちくるっと、教えよる」てち言(ゅ)うち、
親父さんの言わしたて。
そうして、
「向こうに着いてから、きれいに綯(の)うた、
藁で綯(な)った縄を燃やして、
くえんごとして持って行け」て、言わしたとかて。
そいで親はこれだけ綯われんとするから、
どうとかて言うたことのあるごたっですよ。
「捨てられん」て言うて、床下になわしとったて。
そして殿様がその、
「こりゃあ、どうして綯(の)うたか」ち言(ゅ)うたら、
「こげんして親父から習(なろ)うた」て。そうして、
「親父はどげんしとるか」ち言(い)うたら、
「姥捨山に連れて行ったいどん、こう言う風に
大事な知っちょる親は、捨てられんとか何とか」て言うち、
「家に連れてきてわしとっ」て言うたけん、
(そいが本当かどうか知らんですけどですね。)
そしたら殿さんの、
「これから婆捨て山に年寄りの親を捨つることはでけん」
て言う条例が出たとかて。
そう言う話を聞いたことあったです。
(出典 未発刊)