嬉野町春日 兩岡カチさん(大3生)
むかし。
蛇のね、きれいか女子にごっとい夜這いに行きよったてじゃんもんね。
そいぎあの、
「ほんにあの女子に腹太(ふと)めたいどん、
桃酒ば飲むぎにゃ、もうちぃ下っ」
ち言うて、語いよったてじゃんもんね。
「もう困ったもん。妊娠させとるどんね、
あの、桃の花ば入れてさい、
桃酒飲むぎそいがちい下っ」て言うてね、
語いよったとば、誰かに聞いたいどんね。
そいぎにゃあ、またその晩じゃい明日の晩じゃい来らした時、
その、羽織の袖じゃい糸ばつけとったてじゃんもんね。
糸ば、針ばぴしやあっと通して、こう羽織にきじゃい、着物の袖じゃいね。
そいぎぃ、ずうっと朝つけて行かしたぎぃ、血のずうっとね、
あの、やっぱい尻尾に刺さっとったちゅうもんね。蛇(じゃ)の尻尾に。
そいけん血のずうっと、あの、岩穴ン所さい行ったろうだいね。
そい、そけぇ蛇じゃったてもんね。
そいぎぃ、桃酒ばいっぱい飲ましたぎ下ったじゃんもんね。
そいけん、お節供には桃酒飲むもんてじゃんもんね。
(出典 嬉野の民話 P60)