多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 あの、むかし。

博労(ばくりゅう)さんがおらしたて。

そいでその、痩(や)せ馬ば連れて来て昔ゃ、

よう博労さんがその、痩せ馬の、その、

馬とか牛とか連れて来て。

そして、これ襷(たすき)はもう、

上手とか何とかで、

まあ良かごと【調子の良いこと】言うて、

ひょうつかして【おだてあげて】昔ゃ、

あの、売いよったわけですたいね。

ところが、痩せ馬を連れて来て、

「この馬はない【ね】、とにかくその、

銭糞(ぜにくそ)

たるっぼう【たれるよ】。

そいけんない【だからね】、

ぎゃん【こんなに】

痩せとっばってんが【痩せているけれど】、

いっちょ買わんかあ【一つ買わないか】」と、

言うことで、その、買(こ)うて。

そうしてしたぎにゃあと【そうしたら】、

いっちょん【一つも】

銭糞たれんけん【たれないから】、

腹きゃあて【立腹して】

博労に文句言うたぎぃ【言ったら】、

「あの、何食わせよっかい

【食わせていますかい】」て。

「干し草食わせよっ【食わせている】」て。

そいぎぃ、

「あさんのごと【あなたのように】、

干し草じゃいかん」て。

「そいけん、時たまには、その、

小判ば食わすっぎないて【食わせたらね】、

そのまま小判の出てくっ」て。

「そいけん、

やっぱい馬も元を食わせんけんが、

金儲けにゃならんぼう

【金儲けにならないよ】」て言うて、

その、言わしたと、

言うようなことやった。

[大成 六二一 金ひり馬]
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P49)

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