多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)

 狐は、ほんに鼠(ねずみ)の焼いたとは好いとってじゃんもん【好いているそうです】。

そいぎぃ、そいば、あの、蒲焼きして、そしていっちょ金儲けしゅうで思うて。

そいで、そいばまあ、蒲焼きしよったぎと、その、狐が来たてっちゃん、化けて。

そいで、来たぎその、

「売ってくいろう」て。

「あさんどん【お前たち】は、いつでん柴の葉どんばっかい持って来(く)っけんが、

ほんな物(もん)ば持ってこんば売らんじゃーあ【売らないよ】」て言うて、

蒲焼きすっその人が、言うたらしか。

そうしたぎ今度(こんだ)あ、帰ったてっちゃんもん。

そして帰ってしたぎぃ、ちょうど博打(ばくち)の始まっとったて。

そいぎぃ、その博打の所(とけ)ぇ行たぎぃ、何(ない)もかんも、

銭のどっさい【銭のたくさん】ほんなもんのあんもんじゃい【本当のお金があるもんだから】、

そいば【それを】、その、今の狐が、野狐が持ってはち来て。

そうして、その焼き鼠ば買(こ)うて大抵、金儲けしたてったん【したそうよ】、

て言う話ゃ聞いた。

そいまあっきゃ。

(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P251)

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