佐賀市久保田町町東 高木マツエさん(明43生)

 長崎の島原で ですね、

お医者さんが、子供が蛇ば苛(いじ)めよったとば助けて、

逃がしたそうですもんね。

そいて、その蛇が人間に化けて、

そいて、その人の嫁さんになって 赤ちゃんまで出来んさったて。

そいばってん、

「子供に乳ば、飲ますっ所(とこ)には、絶対、入っぎでけん【入ったらだめだ】」て、

あまい【あんまり】言わすもんじゃい、

こっそい見らしたら、蛇の姿になって乳ば飲ませよんさったて。

そいけん、その蛇は、

「そいば、見られたけん」ちゅうて、自分の目ば一つ抉(えぐ)ってですね、

「子供の泣く時は、こいば、しゃぶらせてくれ」て言うて、

自分の目ん玉ば一つやって、雲仙のスワン池ちゅう所(とこ)に帰って行くとでしょう。

そいぎんたぁ【そうしたら】、その話ば、殿様が聞いてから、

その蛇の目ば取り上げてしまわしたて。

そいたらもう、お医者さんがまた、スワン池に行ってから、

その嫁さんの名前ば、呼びんさったら、シャーっと上がって来て、

もう一方の目ん玉も、やいなっわけたいね。

そうしたぎ、その目ん玉も殿様から取られたので、

蛇が怒って、お医者さんには

「北の方さん、逃ぐぎ良か【逃げたら良い】」ちゅうてから、

雲仙岳ば崩して、そうして、津波ば起こしたそうですもんね。

そいが、海の先に見ゆっ、

雲仙岳の「島原くずれ」の由来(ゆわれ)て、

そがん話ば子供の時聞いたそうですよ。

(出典 新佐賀市の民話 P56)

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