三田川町目達原 寺崎 作(明41生)
お母さんば背中に背負(かる)うとっわけ。
そして、捨てに行くわけです。
上(うえ)から、お上(かみ)から、
「お前(まい)方の母ちゃんな幾らか」て。
「六十五」て。
「そんないもう、明日までに捨ててこいよ」て言われて、
息子が泣く泣くね、お母さんば
「捨てに行く」ち言(ゆ)うことは、言わないわけですよ。
そして、後ろ向け背負(かる)うて行く。
そん時、お母ちゃんが、あの、木の枝ば折っていくわけ。そして、
「お母さん、お母さん。そがん動くな、危なかばい。
お前(まい)が俺背負(かるわ)れといて動くない、危か」て。
「お前が道ば迷わんごと、ちゃんと目印に木ば折っとくとやいけん。
この木を折ったとこ、戻いがけも道迷わんごと、こいを頼って帰れ」て。
捨てられる方でも、やっぱい親心やね。
親の煩悩ちゃ切れんやったと。
[大成 五二三A 親棄山 AT九八一]
(出典 未発刊)