伊万里市南波多町谷口 高田リセさん(年齢不詳)
むかし。
ふうけ【馬鹿な】聟（むこ）がいました。
ふうけ聟は、もの言い方すら、よく知りませんでした。
ある日、ふうけ聟は嫁の里へ行かなければならなくなり、
そこで嫁は、
「床ン下におって、糸を引っ張るけん、その時は、
『さようでございます』と、お辞儀せろ」と教えました。
それで、ふうけ聟は嫁と一緒に嫁の里へ行ったのです。
嫁は、床の下にもぐって、
糸を「チョコン、チョコン」と、引っ張りました。
すると、ふうけ聟は、
「さようでございます。さようでございます」と言い出しました。
ところが、嫁は何回も強く糸を引っ張っていたので、
それが切れてしまいました。
ふうけ聟は、嫁が合図をしなくなったと思って、
何も言わずに頭を上げないようにしてました。
家の人は不思議に思って、
「どうして、そぎゃん【そんなに】黙ってしもうたかい【しまったね】」と、
ふうけ聟に聞きました。
ふうけ聟は、何と言って良いのか分からないので、
「さようでございますの方の切れた」と、言ってしまいました。
(出典 佐賀の民話2集 P238)
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