玄海町浜野浦 吉田鶴光さん(明43生)

 くいのあいのあったかどうか知らんばってん、

「こりゃ、良かぞ。今度うんと気張らん」ち言う。勘右衛門さん、

「牛んとは、のさんもん」と言うて、自分の所(とこ)にゃなかもんじゃるけん、

「替(かわ)いどんすんな。

うん、こりゃ、ぎゃんかあの、ないもんか。

俺が金玉の太さもなか」ち言うて。

そうしたところが、飼い主がですな、飼い主は、他に飼う者がひとりおっ。

大きくなっ飼い主ね。

飼育主がおっごたっ。

「何(なん)て言うか。俺(おい)が余(あんま)いその、

『お前がいくら金玉太か』て言うても、

俺が牛より太か金玉の、お前の牛な。

あんたもその、俺が金玉よりも、

この牛より俺が金玉が太かったら、お前の牛、俺(おれ)やるか」

「うん、やっよう」

「そんないもし、こん牛より俺(おい)が金玉小(こま)かったら、

お前に金玉ちびってやっ。取って良か」

「よし」

そいぎぃ、勘右衛門が、牛のそれパッと、はまったちゅうもん。

勘右衛門が金玉が太かと。

「おうー、こりゃあ、良か牛。替わったら損」

ち言うて、途中の評価ばすっですね。

「こりゃあ、良か牛。こりゃあ、子牛」

そん次ゃ、今度(こんだ)あ、勘右衛門さん、別々に診察に、

いっぺんに来てはでけんが、勘右衛門さんは、金玉をむくい出したて。

勘右衛門さん金玉太かったちゅうもん。

褌(へこ)でひと被らんじゃった。

勘右衛門の金玉よい太かとはおらん。

佐志(唐津市)の真ん中、金玉持って、

「俺が金玉出とる。俺が金玉見する」ち。

「何(ない)のか」ち言うぎぃ、勘右衛門の金玉よいおらんじゃった。そいから、

「勘右衛門が金玉、日本一」

そいで、現金どま出して、金玉の小(こま)かったけん、

相手が太か金玉やったけん、十六文ばっかいやったちいう。

そいで、

「牛よい、勘右衛門が悪口は太かったち、誰(だい)じゃい言うたか」ち言う。

「いんにゃあ、お前がとは太かったよう。俺(おり)がとよい太か」

「なんの、俺が、お前とのなし、そんない、俺がとよ。

俺、お前んと。悪口ば『太か』ち、言うたもんにゃ。

そん、声たて言うばってん、良か牛て、誰(だあ)いも言わん。

ばってん、俺が金玉、日本一自慢じゃ」

その牛ゃ、そん、何ちゅうか、証拠にのる。

とうとう金玉で牛ば売ったという。

そいばっかい。

(出典 未発刊)

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