佐賀市長瀬町 納富信子さん（大14生）
むかーしね。
立野の長泉寺さんに、偉い和尚さんが来られることになりました。
そして、
「もう、ありがたーか【有難い】お説教のあっけんが、みんなで参ろうか」と言って、
立野のあたりに、いろいろとご馳走を持って参ってました。
それで、
「船津ん辺（にき）にも来てくんさい」と言われました。
和尚さんは、
「そんない、行かじゃなんみゃあのう」と言われ、
「とにかく、話も上手ばってんが、くう食わすてっばい【たくさん食べられるそうだよ】。
そいけん、立野ん辺（にき）は、こう、ご馳走ば作って持って行きござった模様ばい」と言って、行かれました。
そうして、何日か、お経が続いて、船津のあたりの者（もん）の所へ行ったけれど、
「何じゃい、難しゅうしてわからんごたっとば聞いたっちゃ、おもしろばしぃあっこう」と言って、
青年たちは畳の端を毟（むし）ってました。
そして、
「何か、偉い和尚さんのしかめらす【顔をゆがめる】ごたっない」と、誰かが言いました。
すると、
「うん、おかしか。俺（おい）が畳のむくれとったば引っ張っぎぃ、和尚さんのしかめらすぼー」と話してました。
だけど、
「長泉寺さんな、今、荒れ果てとっけんが、たまにゃあ、偉か和尚さんにも来てもろうて、話ば聞かんばくさー」と言って、
次の日も、またみんなで行かれました。
そして、次の日も、やっぱり、おかしいから、
「そいぎぃ、俺（おい）もいっちょしてみゅう」と言って、
隣の人が畳を毟（むし）ったら、本当（ほん）に、顔をゆがめられました。
そして、
「ありゃあ、やっぱいおかしかごたっ。
どっから来（こ）らしたこっちゃいもわからんやろうが。
偉かちゅうだけで、ありゃ、ちょっとおかしかぼー」と、みんなが話してました。
そして、誰かが、
「ひょっとしたら、あいは狸の化けとっとじゃなかろうかない」と言って、
「そいばってん、口じゃ言われんけんが、部落じゅうの犬ば集めて来（け）ぇ」と言いました。
そして、
「俺（おい）が合図すんまで、誰（だい）でん犬ば押さえとけよっ。
そいで、俺が合図すっぎぃ、みんなで犬ばほしまかせろ（けしかけろ）」と言ったそうです。
そして、合図に合わせて、
「よーし。ほら、行け行け」と言って、
けしかけたら、大きい古狸になって逃げて行ったと言う話。
そいぎぃ、ばあっきゃ【それで、おしまい】
（注） 長泉寺は、佐賀郡東与賀町立野にある曹洞宗の寺。
（出典 さが昔話 P31）
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