三養基郡基山町 平山好三郎さん(年齢不詳)

 むかし、むかし。

あるところに姥捨山と言うところがあった。

そこへ老人を捨てるようになっていた。

ある時、お父さんは息子に、

「婆さんが年を取ったから、姥捨山へ捨てに行く」と言った。

息子と孫はホゴと言う、

かごの中に婆さんを入れ担いで姥捨山へと登って行った。

ところが登って行く途中、

ホゴの中から婆さんは、木の枝を時々折っていた。

「また、帰って来る道のわからんごと、そがんしょっ」と、息子は言った。

「私や、そうじゃなか。

おまえたちが帰りに道に迷わんごと、ぎゃんしょっちから」と、

婆さんは息子と孫に言った。

息子と孫は、婆さんが言ったことに耳を傾けなかった。

「婆さん、ここが姥捨山」と、息子は言った。

そしてホゴをそこに置いて帰ろうとしたので、

「おとうさん、ホゴを持って帰ろうばい」と、孫は言った。

「いんにゃ、ホゴは置いとく」と、息子は言うと、

「いんにゃ、おとうさんが年のいたてから、

このホゴで担うて来んばならんけん、持って帰ろ」と、孫が言った。

父は息子からそのように言われたので、

自分も婆さんみたいに年寄りになると、

このホゴで担って連れてこられるかと思った。

息子から親は教えられた。

そして、息子と孫は再びホゴの中に婆さんを入れ、

担って家へ戻っげな。

(出典 佐賀の民話一集 P50)

標準語版 TOPへ