嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)
むかーしむかしねぇ。
ある村にさ、三人の男のおったちゅうもん。昔ゃ世の中の開けてもおらんじゃったもんじゃい、話どんすっとがいちばん楽しみじゃったてぇ。
「そいぎもう、安かもん話ばしゅうかあ」て、言うことになったて、ねぇ。
そいぎぃ、一(ひと)人(い)の男が言うにはねぇ、
「俺(おどん)が所(とけ)はさ、俺(おどん)が所のお寺にはねぇ、太ーうか山門のあっとよう。あいどん(シカシ)、たった三文(門)」て。
「そぎゃん安かにゃあ」て、言うたて。
そいぎぃ、もうひとりは、
「家(うち)ゃあさ、あのお寺の山門よいか、うちのお宮さんの鳥居は太かばい。恐ろしか見上ぐっごと太ーうかお宮さんの鳥居ですたい。そいで、たったの一門(一文)ばい」
「そいも安かにゃあ。気色に安か門(物)ばかい」
「まあーだ安かとのあっばい」ち言(ゅ)うて、まあ、ひとりの者が言んしゃったちゅう。
「家(うち)ぃの裏にはさ、三里もあっごと恐(おっそ)ろしか池の太かとのあっと。あいどん、あすこの池の魚(さかな)はただで釣いができてさ。三里もあっごと太か池で、ただで釣いのでくっとばい。ただで釣いの」て。
「安かにゃあ。ただからついのくってやあ」て、皆ビックイした。
そいばあっきゃ。
(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P595)