嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかしねぇ。

恐ーろしか大きか男のおんしゃったて。そいぎぃ、この人の名前はねぇ、大鉢(だいはち)さんて付(ち)いとんしゃいどん、恐ろしか余(あんま)い人の優れて良かもんだから、誰(だい)でん大鉢(ううばち)さんて、この人んことば言いよんさった。ところがねぇ、この人は体も太かったいどんね、何(なん)でん言んしゃっことの太か太か、太かごとばっかい言いおんさったあ。

そいところがねぇ、もう、隣(とない)村にもねぇ、ちょうど話ば太か話ばあっかいすん者(もん)のおんしゃったてぇ。そいぎねぇ、隣(とない)のその太か話ばしんしゃっと、どんくりゃあばっかい大きな話ばすっじゃろうかにゃあ、と思うて、この大鉢さんがねぇ、隣村まで出かけんさったてぇ。あったぎその、隣村の人の言んさっことにゃ、

「私ゃばい、有明どま水の全部(しっきゃ)あどめは入(ひゃ)ってしまうごとっ太か盥(たらい)ば持っとう」て、こぎゃん言んしゃったてぇ。

「そがん有明海の水どま全部どめ入(ひゃ)あごたっ太か盥ば持っとってやあ」て言うて、(持っとって言んさんもんだけん、どがんしゅんなか。)

「そいぎぃ、大鉢さん、あなたは大抵(たいちぇ)体も太かいどん、何でん太かとが好(し)いとってやろう」て言うて、言んさったぎぃ、

「ない、ない。私ゃねぇ、恐ーろしか私ん裏の我が竹藪(やぶ)には、竹の伸びっごと伸びて、伸びとっ。雲ん上まででん伸びて、年中、私が裏の私(わたい)が家(え)の竹薮の竹の、あの星どま煤(すす)ばしょっちゅう払うてくいよっけん、星のキラキラキラ、ありゃ光いおっとう。星の光いおったあ、私(あたい)のお陰」て言うて、言んしゃったて。こいもまた太か話にゃあ、て思うて、聞きおんしゃったぎねぇ、

「あいば、有明海の水ば入(ひゃ)あっごと太か盥のたばばしぶっとないば、私(あたし)が、星ばいっちょう、星の埃払いの竹ば一本、あなたに進呈しゅう。そいじゃなからじにゃあ、あなたの輪のうっぱしいどんすっぎ輪がたがゆうはできゅんみゃあ」て言うて、二(ふた)人(い)の話はそいで落ちたてばあい。

そいばあっきゃ。

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P577)

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