嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 恐ろしか大(おお)法(ぼ)螺(ら)やら嘘つきやらすん者が、

村に三人もおったちゅうもん。

もう競争して法螺ば吹きよったてぇ。

三人のうちの一人は、

「七反田ん中ば持っとって麦ばいっぱい作って、

七つの倉に入いきらんやったあ」ち言(ゅ)うて、言うた。

そいぎぃ、まあ一人の人はねぇ、

「大豆ば蒔(み)ゃあてみたぎぃ、恐ーろしか日照りで、

全部(しっきゃ)あ枯れてしもうた。

たった一本残った。

その一本は栄ゆっ栄ゆっ、恐ーろしか栄えて、

七反の田ん中いっぱいなって、

実は取いきらんごたったあ」ち言(ゅ)うて、

大法螺ば吹いたて。

そいぎぃ、

もう一人の法螺吹きがねぇ、

「私は、長(なーん)か槍(やい)ば持っとってぇ。

その七反の米・麦ば入れとっ倉も突き刺(さ)さい、

大豆の七反いっぴゃあも刺さっとっ。

こう広がっとっでん、

ブスーッて、刺さっごと長(なーん)か槍ば持っとっ」

て言うて、言いおったちゅうもん。

そいが、

殿さんの耳入って、

「そいじゃ、『そのいちばん長(なん)か槍ば持っとっ』

て、言うとば、

ほんなこてどがんくらいばっかいの長(なん)か槍じゃいろう、

あの、我が所(とけ)ぇ持って来て見せてもらいたかあ」

て、殿さんの言んしゃったけん、お使いばやった。

そして、

その持って来いて言う前に、

「その槍ば持っとっちゅうとば連れて来い」て、言われて、

大広間に呼び出された。

そいぎ殿様が、

「ぜひともその槍を見たい」て、言んさったらさ、

「お目にかけることは、もうわけないことですけれども、

私が槍ば持って来っぎぃ、

殿さん首もスパーッて、突き刺して向こうさんはって行くけん、

とても持って来られん」て言うて、

法螺やら嘘やらついたて。

そうして、三人とめぇ嘘つき較べしおったいどん、

槍持ったとがいちばん法螺の名人じじゃったろうごたっ。

そいばあっきゃ。

[四九一 嘘つく槍(AT四六五A、一九二〇)(類話)]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P363)

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