嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

むかーしむかし。

ある村にとても金持ちがおったちゅう。

そいで

米蔵ば七つも八つも、

そうして、そこの娘さんがさ、

隣【とない】の長者さんの家【うち】にお嫁にいくごと決まっとったちゅうもんねぇ。

そうして、ようようお嫁入りの日がきました。

金持ちさんは、もう娘も可愛いしてたまらん。

もう立派に仕上げさせて、

他所【よそ】にゃ家から嫁さんに出る時は、珍しかごとしゅうだいて、

大抵【たいちぇ】考えよんしゃったて。

そうして、

家【うち】の分限者ちゅうことば相手の長者にも知らせんばなあ、

て思うとんしゃったちゅうもん。

そいぎぃ、

どぎゃんすっぎ良かろうかにゃて、大抵考えよんしゃったいどん、

「ああ、そうだ」ち言【ゅ】うて、

「盛大な花嫁行列は、こいがいちばんよかろう」ち言【ゅ】うて、

この七つも八つも持っとる米蔵から米俵ばズーッと積んで、

その上ば花嫁行列の行くごとしようと、考えんさったちゅう。

「そうじゃ、そうじゃ。こいよい盛大なことはなかあ」ち言【ゅ】うて。

そうして、

立派な花嫁さんば我が家から、ようよう行くことになって送い出しんしゃったちゅう。

そうして、

ズーッと皆、沢山【よんにゅう】寄って来て見物すっとに見てもらおうだーい、

と思うてね、米俵の上ば通って行くごとしたちゅう。

そいぎぃ、

見物人どま御飯どま余【あんま】い食べんごとして、

麦飯どんばっかい食べよったもんじゃっけん、

「豪華なもんなあ。偉いもんなあ」

ち言【ゅ】うて、褒めそやしたちゅう。

その花嫁さんな見じぃ、米俵ばっかいビックイして見物しよったて。

そうして、

花嫁さんがいよいよすんで、米俵は倉さい納みゅう、片付きゅうで思うとったぎぃ、

抱ゆうでしてゆくぎぃ、その米俵が一俵ずつ、フワーンと、

「これ、これ。待っとれぇ」と言うけど、空さん飛んで行くちゅうもんねぇ。

そうして、

「蔵に納めんばらんけん、待ってくれ、待ってくれ」

て、気狂いのごとその、金持ちたんの叫【おめ】くいどん、

米俵は羽の生えたごと、全部【ひっきゃ】あ飛んで行たてしもうたて。

そいから先ゃ、

金持ちさんが、米ば踏んだくったけん罰かぶって、

とうとう落ちぶれてしもうたちゅうばい。

そいばあっきゃ。

[一二五  本格昔話その他]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P395)

標準語版 TOPへ