嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

むかーしむかし。

ある村に、ウローウローしながら乞食さんのやって来たて。

そうして、石につまずいて

道にヒョローッと、引っ繰り返って仕舞【しみゃ】あさった。

そいぎ

ジーッと見おったぎぃ、その乞食さんの目の前に、

ご飯粒の三粒落ちとっとの目【め】ぇかかって、

そいば拾うてから

お尻叩いてばん、食べんさいたて。

そうて一時【いっとき】したぎ起き上がって、

今度は元【もと】来【き】た所【とこ】は、

もうシッカイした足でスタスタ、スタスタ行きんさったて。

ところが、

その村には、一軒の長者さんの家【うち】のあったてやもん。

あったいどん、

そこの一【ひと】人【い】息子ちゅうぎぃ、

ご飯食う時ゃ口上ばかい言う。

「今朝のまんまはゆるうして【柔ラカクテ】食われん」

て、言うたかと思うぎぃ、夜んなっぎぃ、

「この飯は硬かあ、もう私【わし】ゃぎゃん硬かご飯食うぎんと、

もう、胃の悪うなあ」

言うばっかいじゃなし、

茶碗ば放り投げて、言うてしかめて困って。

そうして、

ついだお茶碗どま放り投げて、

「ままは嫌いじゃあ。ままは嫌いじゃあ。いやだ、いやだ」

言うて、いっぱい散らかして、

家【うち】ん者【もん】ば困らせよったて。

あったぎぃ、

下男達の見てる目の前で、その日もねぇ、

あの、ご飯ば投げ散らして苦情ば言いおったぎぃ、

両足のねぇ、

頭にぺターッてひっついて歩けんごとなったちゅうばい。

そいぎぃ、

長者さんじゃあるし、

「さあー、お医者さんじゃ、さあー、薬じゃ」ち言【ゅ】うて、

もう、皆が心配してあれこれと手のつく限り、

養生ばさせんさいどん、いっちょん足の元んごとならじぃ、

歩くごとならんて。

とうとう死んまでいざりさんのごとしておんしゃったちゅうばい。

そいでねぇ、

お米粒が穀仏【こくみょう】さん

【仏さんを「みょうさん」て言いよったもんね。

小さか時は、みょうさんだよ、と言いおった。】

ていう仏さんの宿っとんしゃっとよ。

あの一粒一粒の米粒は仏さんて。

そうして、

その仏さんば粗末にしたもんじゃ罰の当たったと。

今からも粗末にすっことなん。

お米ば、ご飯ば、粗末にすっぎぃ、足の額にひっつくぞう、

て言うて、言い伝えがあるて。

そいばっきゃ。

[一二四  本格昔話その他]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P394)

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