嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかしねぇ。

神さんの人間にねぇ、二ーつ袋くんさったあて。

そうしてねぇ、

「この袋は、何時【いつ】ーでん

お前【まい】達から離すことならんぞう」

て、言んさったてぇ。

そうしてねぇ、

前【まえ】ん方には小【こーま】か袋ば下げてくんさったあ。

こいで背中の方には、

太ーか袋ば下げて神さんの下げてくんさったて。

そうしてねぇ、

その袋の中には何【なん】じゃい入っとっちゅうもんねぇ。

前ん方の小か袋には、人の欠点ばあかい詰め込みんさったて。

人の欠点ばさい。

そうしてねぇ、

後ろの太ーか袋にはねぇ、

本人の欠点ば沢山【よんにゅう】詰め込みんさったて。

そいもんじゃい

人間の、我が悪かこと、

我が、あの、いろいろ欠点のいっちょん目【め】ぇかからん

ちゅうもんねぇ。

人の悪かことは、前の方の小か木のブラ下がっとんもんじゃあ、

前ん方のことばあっかい良【ゆ】う見ゆんもんじゃい、

人んことばあっかい言う。

我がことは目ぇかからじぃ。自分のことはわからじぃ。

そういうことて。そういうことです。

[一一三  本格昔話その他]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P386)

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