嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 さあ、話します。題は「七人の和尚さん」。

むかーしむかし。

町にねぇ、日暮れ方になっぎぃ、

真っ黒か衣を着た和尚さんの七人揃うてやって来て、

「酒屋は、町には何処【どこ】にあんねぇ」て。

「ああ、酒屋はこのもう少し先の方の角に

ございます」て、教えたて。

そこで七人の和尚さん達、お酒を飲むこと、

飲むこと飲みんさって。

もう七人とも一人もお酒の好かん者【もん】は

おんしゃらんて。もう、

ガブガブやって飲みんしゃって。そいぎぃ、

嫌なことも言わじぃ、喧嘩もせじぃ、

ニコニコ笑【わる】うて、

楽しそうに話しおんしゃって。あの、

七人の和尚さんの来て、

「酒屋は、酒は、もう無【の】うなっばい」

ち言【ゅ】う。

そいでも、明け方になっぎぃ、

皆じきおらんごとなって。ところがまた、

また日暮れ頃なっぎぃ、

七人の真っ黒か衣を着た和尚さんが寄って来て、

もう酒屋さんに聞いたら、真っ直ぐ酒屋さんに来て、

「お酒を頂戴」て言うて、もう楽しく飲みんさって。

そいがねぇ、殿さんも聞きんさったてよ。そいぎぃ、

「和尚さんの、こぎゃん酒好きの和尚さんないば、

城中で上等のお酒ば振る舞【ま】おう。

振る舞いしおう」て。「そいで是非とも、

お城に案内してくれ」ち。

ところがねぇ、お殿様の声がそうかかってから、

皆が一生懸命もう、和尚さんの文句がある。

村はずれまで行ってみよう。ああ、

あの酒屋に行ってみゅう、もうそこ見えんて。

ところが、お空を仰いだら、

北斗七星がキラキラと輝いていたて。そいぎぃ、

皆が、こう見上げて、

「あらー。北斗七星の輝きがきれいねぇ。

今が今まで真っ黒して、

一つも輝いておらんじゃったに。そいぎぃ、

あの七人の和尚さんが、

北斗七星さんじゃったばい」て、

言うことじゃったと、いうところ。

そいばっきゃあ。

[九四  本格昔話その他]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P368)

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