嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしも今も、人間は誰でん死なんばらん。

そいぎねぇ、ある人がとうとう達者かばってん、

病気になって死にんしゃったちゅうもん。

そうしてもう、ズーッと死んで、

そいこそ死人の道をズーッと行きおんしゃったぎぃ、

チョッと早(はよ)う死んどった者(もん)のねぇ、

地獄に落ちて。そうしてもう、

赤鬼・青鬼どんから槍(やい)で突かれて

血だらけなって、

「ギャフギャフ」ち言(ゅ)うて、

もう怖(えす)かごと悲鳴ばあげおんしゃった。

怖かねぇと思うて、行きんしゃったぎぃ、

こっちの方では、優ーしかお婆さんの、

優ーしか顔して、同ーじごと恐ろしか

赤鬼・青鬼が突きて突きたくっばってん、

何事(にゃーあごと)もなかごと、

血でん出じおんしゃっちゅうもんねぇ。

「なしじゃろーかあ」ち言(ゅ)うて、

閻魔さんに聞いたぎぃ、

「あの人は、団子ば仏さんに上げちゃぎぃ、

団子に槍(やい)の玉の刺(さ)さいよっけん、

いっちょん痛(いと)うなか」て。

そいけん、死ん時ゃ団子ば上ぐっと良かとて。

団子ば仏さんに上ぐっぎねぇ、

その鬼どんが突くとの団子にばあっかい、刺さって、

いっちょん苦しゅうも痛うも、どぎゃーんもなかて。

そいけん、死んでからはねぇ、団子ば上ぐっちゅう。

そいばあっきゃ。

[八四  本格昔話その他]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P359)

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