嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 こんなあ、埋め合わせに短いのを話します。

「夜泣きの呪い」ていう題です。

むかーしむかしねぇ。

赤ん坊が生まれたてぇ。

そいどんその子の家(うち)の赤ん坊は、

「もう、昼はおとなしか。ありゃあ、

良(ゆ)う眠(ねぇ)とっねぇ。おとなしか、

良(ゆ)う寝る。『寝る子は太る』て、

言うちぇあっけん、良かばい」て、

言うとっところの、夜になったら、

もうゴヤゴヤ、ゴヤゴヤ泣くて。

もう夜さりゃあ、もうこの赤ん坊が泣くもんじゃい、

家中の者は寝ぇられん。

「ほんに、何とかごがん泣かん呪いは

あんみゃあかあ」て言うたら、お婆さんの、

「なんて、夜と昼とこの赤ん坊は間違うとっ。

今(こん)夜(に)ゃねぇ、

鶏の絵ば枕に下に描いてさい、

そうして、その枕の、赤ん坊の敷(す)く枕の下に、

鶏の絵ば描いて、そいぎ枕ば敷(す)けさすっぎぃ、

泣かんばい」て、お婆さんが教えんさった。

「ほんのこと泣かんやろうかあ」ち言(ゅ)うて、

早速、鶏の絵ば描いて寝せたら、

夜は泣かんでスヤースヤと

朝まで寝(お)小(ね)便(しょう)せんで

眠ってくいたて。

「お婆さん、有難う。お婆さんの知恵て凄いねぇ」

て、家中の物どんが、皆が喜んだて。ほら、

お婆さんが言うには、

「あの鶏はさい、夜中鳴かもん。

朝夜(よ)の明くっぎぃ、夜の明けたあ、

コケコッコウー」て鳴く。

「そいけん呪いの効くっとよ」て、

お婆さんは得意満面じゃったてよ、ていうお話。

[八二  本格昔話その他]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P358)

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