嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 「三人の星」て、いうとで話します。

これは母から聞いたんですけどねぇ。

もう、夕日が落ちてから、

夜(よ)の夜して(一晩中)きれいな光りを地上まで届くように光らすために、

山の上の湖にお星様たちは、水汲みに来るそうです。

そいぎぃ、ある夕方のこと、

日がもう、沈んで涼しくなってからねぇ、

三人の星姫さん達が樽(たる)を持って、水を汲みに来たそうです。

そして、上の二人は早速きれいに澄みきった水を汲んで、

「もう、あんたはまだねぇ」て、

三人目のお姫さんに言んしゃったぎぃ、

「あら、ここに、鵲(かささぎ)が、ここに何か、

燕(つばさ)も土で汚れて、ここに倒れている。

可愛そうねえ」て言って。

そうして、その汲み上げた水で燕をきれいに洗って、

「あなた、ここにこんなにして飛びきらないでいたら、

あの、獣(けもの)から食べられますよ」て言(ゆ)って、

自分の袖できれいに乾くように、

その羽も足も拭(ふ)いてやんしゃったて。

そいぎぃ、その燕は、もう喜んで木の上さにゃ、

高い木の上に飛んでいったら、三人目の星姫様は、

「ああ、良かったあ。本当に私は一ついいことしたようで、

本当に気持ちが良かったあ」て言うて、

喜んで樽いっぱいの水を汲んで、そうして、

夜空に高ーく帰って行きんしゃったて。

そいぎねぇ、

「何時(いつ)ーでも宵の明星て、

東の空を見ると三つのお星さんが並んでいる。

あれが三人の星姫さん達。一晩中、

山の上のあの澄みきったきれいなお水を汲んで、

そうして、きれーいな輝きを私達に見せてくれるの。

みんな優しい星の光りねぇ」と言って、

母は私(あたし)に話してくれました。

そいまでです。

〔二五  本格昔話その他〕
(出典 蒲原タツエ媼の語る843話  P294)

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