嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかしむかし。

ある所に、

もうひとりの人が大変可愛がられておんさったて。

年頃になって、

お聟さん取らんばごとなって。

そうして、お聟さんば取って仲良く暮らしていたけれど、

お腹が大きくなって赤ちゃんが生まれるようになって。

そうしてもう、お産が近づいてけれど、

そん時ゃあ、熱出して、

「頭が痛い。頭が痛い」て、

言うて行た時に、

行者さんが通りかかって、

「ぎゃん嫁さんな苦しんどっとこれぇ、

あがん水でどんじゃ、頭が冷えん」て

「山の、奥山に行たて、

万年雪ちゅうとあっけん、

そいば取って来て冷やすぎ良か」て。

「そいぎぃ、聟さんが取いぎゃ行かじゃあ」て言うて、

聟さんば奥山に万年雪を取りにやらせたら、

もう、待てど暮らせど、

その聟さんがちっとも待って、

早(はよ)う頭を冷やしてやりたいどん、

帰って来んて。

それーで、もう内輪の人達が近所の青年達も手伝いを、

加勢を受けて、その山まで行ってみたら、

雪の中に大きな蛇がダラーッてなって死んどって。

そん時、皆が、

「あらー、これは聟様は人間じゃなし、

蛇じゃったあ」ち言うて、

ビックリしたて。

聟さんは蛇じゃったて、

蛇の聟入りの話です。

そいばあっきゃ。

〔四  本格昔話その他〕
(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P265)

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