嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかしねぇ。

もう恐ろしゅう誰【だい】でんかんでん、

騙しおっ狐のおったちゅうもん。

そいぎねぇ、ある時ねぇ、

良かー女【おなご】になって出て行たてぇ。

そいぎそけぇ、

あの、お寺の和尚さんが出っかしんさったてやんもん。

そうして、

「お前【まり】ゃあ、

化けとっつもいじゃろいどん、

尻尾どま、そけぇ、

ほら太かと出【じ】ゃあて化けとっじゃっかあ。

お前ゃあ、もっと良く化けんばいかんぞう。

お前もあの、何【なん】か、

化くっ七化けの玉どん持っとろうだい」ち言【ゅ】うて。

「うん。持っとっよう」て、言うたて。

「お前ゃあ、

こぎゃん尻尾どん出して化けちゃ難しかあ。

俺【おい】が被っとっこの頭巾なさ、

まっと良かとばい。

もうねぇ、何でんかんでん、

真っ昼間【ぴるま】でんね、わからん。

隠るっ」て言うて、

和尚さんの言んしゃったて。

そいぎ狐が、そいば物【もん】なもんに思うてさ、

「そいぎぃ、この七化けの玉と換ゆうかあ」

一時【いっとき】ばかいばい。

一時ばかい換うて、いうことになったて、ねぇ。

そうして、うまく換えたちゅうもんねぇ。

そいぎぃ、

和尚さんの真っ昼間でん見えんて

言うたことば本気に受けて狐がさ、

油揚げ屋の前に翌日、

真っ昼間に出かけて行ったて。そいぎぃ、

「真っ昼間、狐のこけぇ

、ほら来とっ」ち言【ゅ】うて、

「さあ、棒持って来い。

さあ、箒【ほうき】持って来い」ち言【ゅ】うて、

てんでんもう、ぼた【接頭語的な用法】打ちされてさ、

その狐はとうとう死んだちゅう。

そいばあっきゃ。

〔二八三 八化け頭巾【AT一〇〇二】〕
(出典 蒲原タツエ媼の語る 843話 P241)

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