嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかしねぇ。

お母さんが赤ちゃんば残して死にんしゃったぎぃ、

二番お母さんの来【き】んしゃったちゅうもん。

そいでもう、

その二番お母さんな、継母さんな、

いちばん目の子が憎らしゅうてたまらんて。

そいぎぃ、

お父さんな都さい用事で旅立ちんしゃったて。

父さんな都さん行く時、

「この子を頼むよ」て言うて。

その子は、かっちゃん、て付【ち】いとったてやもん。

そいで、

二番目のお母さんに髪を櫛けずってもらうもんじゃっけん、

何時【いつ】ーでん髪のもつれてもう、

恐ーろしゅう解けんごとしとったて。

そいぎぃ、ある日のこと、

継母さんは、温【あった】か煮えたぎった湯で、

「かっちゃんに髪洗うてやっけん、来い。髪もいっちょん洗わんけん、

そがんもつれとっ」て、言んしゃったけん、

「はい」ち言【ゅ】うて、怖【えす】かもんだから継母さんの所に来たて。

そいぎもうや煮えたぎった湯を頭の上から、お母さんがかけたもんだから、

かっちゃんはもう、即座にそん時【とき】死んでしまいんしゃったあ。

そいぎぃ、継母さんは裏の竹藪に深【ふこ】ーか穴ば掘って、

かっちゃんを埋めときんしゃったて。

都の用事がすんで、その竹藪ん辺【にき】ば通いかかんしゃったぎぃ、

向こうから鳥【とい】のさ、

「かっちゃんとけたか。かっちゃんとけたか」て言うて、飛び立ったて。

変【へん】に鳴く鳥のおんねぇ、と思うて。

また、向こうさい行たて見っぎぃ、

「かっちゃんとけたか。かっちゃんとけたか」て言うて、鳴くちゅう。

あら、家の子もかっ子じゃが、かっ子の名前ばいう鳥のおんねぇ、

と思えて、お家に帰るなり、継母さんに、

「かっ子は何処【どけ】ぇ行たかあ」て、聞きんしゃったぎぃ、

「隣村に使いにやっとうー」て、継母さんが言うたて。

ところが、翌日になっても来【こ】ん。

「かっちゃんな何処【どけ】ぇ行たかあ」て。

そいぎまた、裏ん戸口に出たら裏の竹藪【たけやぶ】で、

「かっちゃんとけたか。かっちゃんとけたか」て、

鳴く鳥が来て鳴きよったて。

あらーっ、こん辺【たい】で鳴きよった、と思うて、行ったぎぃ、

そこに、新しか土の盛り上っとたて。

そいぎぃ、ゴソゴソっと、そこを掘【ほ】じくってみたぎぃ、

かっちゃんが埋【う】められとんしゃったて。

そいぎぃ、お父さんな歯痒いしゃ怒って。

そうして、その継母に、

「お前のような、鬼のようなのを家【うち】においとくことはでけん」

ち言【ゅ】うて、暇出しんさったてゆうことです。

そいばあっきゃ。

[二一六 継子と鳥【AT七八一、cf.AT七五一A】]

(出典 蒲原タツエ媼の語る 843話 P183)

標準語版 TOPへ