嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーし。

ある村に、お母さんが亡くなったもんじゃけん、

あの、その姉さんの方はね、先【せん】のお母さんの子供で、

妹の方は二番お母さんの子供やったて。

そいでねぇ、ある日のこと、あの、二人に餅米拾いや行ったて。

ところが

姉さんの袋には、底に太―か穴の開【や】あとったてぇ。

いっちょんいっぱいならん。

妹はその姉の後ろから行くぎぃ、姉のこぼしたとまで拾うもんだから、

じきーいっぴゃあなった。

そいぎねぇ、いっぴゃあなったて。

そうして、早【はよ】う帰ってしもうた。

そいぎ今度はねぇ、

姉さんは拾うても拾うても餅米が溜まらん。

早【はよ】う帰っぎ怒らるっばい、と思うて、とうとう夜さいになった。

そいぎ

姉さんの困って泣きながら、まあーだ拾いおったら目の前に、

お地蔵さんのニコーニコーしておんさったて。

そうして、お地蔵さんは、

「これこれ、お腹もペコペコだろう。

私【わし】もご飯が食べたかようー」て。

「こいでご飯を炊いて、お食べぇ」て言うて、出しんさったとが、

まばゆかごとキラキラ光る金のお釜やったて。

そうして、お茶碗も銀じゃったて。

そいぎ姉さんなビーックリしたいどん、

お地蔵さんから言わるっごとご飯ば炊いたぎぃ、ふっくらとできたて。

そして、

銀の茶碗にいっぱいご飯を盛ってお供えしたて。

そして、

自分は残りのご飯を木の葉っぱについで食べたちゅう。

あったぎぃ、お地蔵さんは、また物言いんさったて。

「もうじき鬼の来【く】っよう。私の後ろに隠れなさい。

早【はよ】うー隠れんばあ」て、言んさったけん、

急いでご飯どま半分食べして隠れたぎぃ、

もう鬼がそこに、赤か鬼や青鬼がやって来て、

お地蔵さんの前に宝物【もん】ばいーっぱい、もう広げたて。

そいぎぃ、お地蔵さんのコッソリね、

「今、『コケコッコー』と、鳥【とい】の鳴く真似ばせれぇ」て、

言んしゃったもんじゃ、後ろに木の茂っとっとば、

パサパサ、パサパサていわせて、

「コケコッコー」て、鳥の鳴く真似ば二声ばっかいしあったぎぃ、

鬼どんは、

「もう、あら、もう夜の明けたあ」ち言【ゅ】うて、

ゴソゴソやって宝物のそけ広げたまま逃げたて。

そいぎぃ、お地蔵さん、

「さあ、これを持って、早【はよ】うーお帰り」て、

言んさったもんじゃ、

その姉娘はねぇ、その鬼の残した宝物を担いで帰ったて。

そいぎぃ、二番おっ母【か】さんが、そいばまたー聞いて、

我が子にも宝物ば拾わせんばあ、貰うてこらせんばあ、

と思うてね。

また、太―か袋に、しかも丁寧に袋に穴ば開けて、そい、

餅米拾いにやった。

あったぎぃ、ちょーど姉さんの時と同【おんな】じように妹も、

娘の行った時も、お地蔵さんが出てきて、

そうして

金のお釜と銀の茶碗と差出しんさった。

そうして、

ご飯を炊いたぎぃ、あの、自分はご飯ができ上がったぎぃ、

自分は、その銀の茶碗でご飯ば食べて、

お地蔵さんにはちぃーとばかい木の葉っぱについで供えたて。

そがんしよううち、鬼どんが来たて。

そして、

じきー今度【こんだ】あ、コソコソしよったぎぃ、目【め】ぇかかって、

鬼どんが、

「昨日【きのーう】は宝物【もん】ば広げとったが、またあの、ああー、

お前【まい】じゃったなあ。

昨日はなかなか夜の明けんじゃったあ」て言うて、言うたから、

その言いぐさがまた面白かったから、

「アハハハ」て、その妹娘の笑うたら、

やにわに鬼がひっかかって来て、

「こりゃー。お前【まり】ゃあ、

昨日の宝物も全部【しっきゃ】あ持ってはっていたあ。

早う、いち食うてしまわんば」ち言【ゆ】うて、妹を食べてしもうたて。

チャンチャン。

[二一二 栗拾い【AT四八〇】【類話】]

(出典 蒲原タツエ媼の語る 843話 P181)

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