嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかし。

ある所にねぇ、親子三人むつまじく暮らしおんさったてぇ。

もう、いっちょん不自由かことなかったいどんねぇ。

ヒョッと風邪引いておっ母【か】さんが、ちい死んでしもうたてぇ。

そいぎぃ、子供は小さいしお父さんなほんに困ってさ、

二番目のお母さんば迎えんしゃったちゅう。【継母さんたいねぇ。】

そいどん、じきその継母さんに子供が生まれたちゅうもん。

そいで、先【せん】のおっ母さんの子も男の子じゃったて。

そいぎぃ、先の男の子が邪魔で仕様【しよん】なかもんじゃい、

いじめばあっかいしよったて。

夜になっぎぃ、昔ゃ何処【どこ】うでん米ば搗きおったけん、

「米ば搗け、搗け」ち言【ゅ】うて、小【こま】ーか時から搗かせおらしたて。

そうして、コットンコットン、コットンコットン搗いて、

お米になしおったちゅうもんねぇ。

そいぎぃ、

そのおっ母【か】さんな真っ白米の搗くっぎんとにゃ、

桶に入れて納戸に運んで、

そうして、実はねぇ、

そのきれいか米櫃【びつ】入った白米は、

白か米はきれいかもんじゃい、自分の生んだ子ばさ、

「色の白ーか良か子になれよ」ちて、米の寝ぐらに寝せよんしゃったちゅう。

そうして先のお母さんの子は、

「お前【まり】ゃ、籾殻【もみがら】ん所でちょうど良か」ち言【ゅ】うて、

「ジカジカすっ。痒【かい】かあ」て言うとば、嫌【いや】がっとこれぇ、

その籾殻ん所【とけ】ぇ寝せおんさったちゅう。

そいどんねぇ、前【しょて】んいちばん嬶【がく】さんの子は、

ああ、籾殻はほんに、「痒か」て、言いよったいどん、

こけぇおっぎ温【ぬっ】かあ、と思うて、

朝は起きて来【き】おったて。

あったいどん

白か米んところに寝せた我が子はいっちょん起きて来【こ】ん、と思うて、

二番お母【か】さんの我が起こしぎゃ行きんしゃったぎね、

その米ん中で冷【つめ】とうなって死んどったてよ。

そいばあっきゃ。

[二〇五B 米埋糠埋]

(出典 蒲原タツエ媼の語る 843話 P177)

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