嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーし。

ある所にとても正直で働き者【もん】のお爺さんがおんさったあ。

このお爺さんな何時【いつ】ーでん、

お昼の弁当は団子ばっかい腰にブラ下げて

山の畑に働きに行きおんしゃったてじゃっもん。

ところが、ある日、

「ああ、もう、まあーだお昼じゃなかいどん、

腹の減ったあ」ち言【ゅ】うて、

腰の団子の包みば開けて見んさったぎぃ、

開くっ拍子に団子のコロコロコロって、転んで行くちゅうもん。

「あら、団子待て。団子待て」ち言【ゅ】うて、

お爺さんの追いかけて行くどん、もう転がっとの早かて。

そうして、やっとその団子の止まったにゃあ、と思うて、

拾うてみたぎぃ、お地蔵さんのそけぇおんしゃったてぇ。

そして、お地蔵さんの口ききんさったてよ。

「爺様、こりゃあ有難う。さっきは団子は有難う」

て、言んさったけん、爺さんは、

「こりゃあ、勿体ない。勿体ない」と、拝みんさいたちゅう。

そうして、お地蔵さんのニコニコして、

お地蔵さんが団子を食べんさったような格好やったて。

爺さんが、そこにボンヤリ立っとったぎねぇ、

ガヤガヤ、ガヤガヤて、声んしたちゅうもん。

こうして見たぎ

人相の悪か山賊どんが、四、五人も登って来【く】っちゅう。

ありゃあ、髭【ひげ】の真っ黒かとの生えとっけん、

山賊に違いなかあ、と思うて見よったぎぃ、

お地蔵さんのまたもの言うて、

「爺さんよ、後ろに早【はよ】う隠れよ」

て、言んしゃったて。

そいぎぃ、早う隠れたて、お爺さんは。

そいぎぃ、

お地蔵さんの前にその山賊どんば

何【なん】じゃ重【おふ】たか袋ば、

「ヨッコイショウ」て、下【おれ】ぇて、

チャラチャラ、チャラチャラ音させて、お金ば勘定し始めたて。

そいぎぃ、そのお金の勘定が終わったぎぃ、

袋に入れてそのままそけぇ袋ばほうり出【じ】ゃあて、

今度は酒飲みが始まったちゅう。

したたか酒ば飲みよったぎぃ、酔っぱろうてさ、

山賊はわけのわからん歌どん、

おかしかごと調子にならんごと歌いおったいどん、

一時【いっとき】したぎぃ、

鼾【いびき】の恐ろしか高【たっ】か鼾ばきゃあて、

ちい寝てしもうたて。

そいぎぃ、

お地蔵様がまた口きいて、

「爺や、今ンうちあの袋ば持って早【はよ】う逃げろう。

早う帰らっしゃい」て、言んしゃったて。

そいぎぃ、このお爺さんはねぇ、

お地蔵さんのお陰、

山賊の寝てる間【ま】に金のつまった袋ば担いで

家さい急いで帰んしゃったて。

そいばあっきゃ。

[一八四 地蔵浄土【AT四八〇】]

(出典 蒲原タツエ媼の語る 843話P135)

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