嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーし。

今もおいどん【俺達】ねぇ、

昔の梟と鶏【にわとい】の話をします。

鶏はさ、恐ろしゅう人間に可愛いがられて卵を生むじゃもんじゃ、

可愛いがって、朝晩、餌【えさ】も貰うもんねぇ。

そいぎぃ、木の高【たっ】か所【とこ】から梟が、

「お前【まり】ゃ幸福そうにして暮らしおんにゃあ」

ち言【ゅ】うて、かねがね妬【ねた】みおったて。

そいでもう、鶏に会うぎにゃ、

「人間の奴から飼い物にされて、このいくじなし」

て、罵【ののし】ったちゅうもん。

そいぎぃ、鶏は梟に、

「何【なん】ば言いおっかあ。

お前【まり】ゃあ、暗か時ならんぎ出て来【き】いえんごと、

恐ろしゅう先まで飛びもえんくせぇ」て言うて、

喧嘩しおったて。

そいぎぃ、あの鶏はねぇ、

「なんか、お前【まい】しゃあが飛べんじゃないかあ」て、

梟が言うて、言い合いよったて。

そいぎぃ、鶏は鶏で、

「親指の温々【ぬくぬく】すっぎぃ、歌【うち】ゃあたかもんねぇ。

そいけん、私【わし】ゃ歌うよう。

『コケコッコー』て、歌うよう」て、言うたぎぃ、

梟が、

「そがんいい加減なことば言うな。

『親指のそぎゃん、ヌクヌクヌクヌクすっ』て、

親指に口どんがあるわけじゃなかーとこれぇ。

そぎゃんことあんもんきゃあ」て、言うたて。

そいで鶏は、

「梟は、そいぎぃ、日暮にしきゃあ合図に、

『こいから日の暮るっ』ち、合図かにゃあ。

ありゃ、鳴くとは」て、言うて返したあちゅう。

どっちも負けん気で言いよったちゅうもんねぇ。

そいぎねぇ、梟が鶏に言うには、

「いんにゃあ、もう、あの、そがんことばかいなかあ」

ち言【ゅ】うて、言うたぎぃ、鶏が、

「そいぎぃ、空の曇ってさ、

お月さんもお星さんも何【なーん】も見えん時ゃ、

あんたどぎゃん声して鳴くとう」て言うた。

「そりゃあ、口持っとろうもん、鳴きゆっ」て、言うごたっふうで、

何時【いつ】も言い合いをしよったいどん、

やっぱりもう、鶏の口にゃ、梟は適【かな】わんやったあ。

そいぎ梟は、その答えに困って目玉を、

太か目玉をクルクルクルっとして、

「やかましか、鶏。お前【まい】の口にゃあ適わん」

て言うて、鶏と梟の喧嘩ちゅう、

わけくちゃ【理由】わからん喧嘩ばっかいするように

仲の悪かったちゅう。

そいばあっきゃ。

[二  動物昔話その他]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話P23)

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