嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかしねぇ。

蛇と、そうして蛙はねぇ、

山の神さんのさい使いもんとして

神さんに仲良く使えとったてじゃっもん。

そいぎある時、山ん神さんが蛇と蛙を呼んでね、

「お前【まい】達のいちばんいい所を私【わし】に教えてくれぇ」

と、仰せになったて。

そいぎぃ、

蛇は自慢してね、

「はい。私のこの澄みちぎった目をご覧くださいませ」て。

「何【なん】でも素早く見逃さず見ることができます。

蛙のように背中についていると、前の方は見えませんけれど、

私のこの澄んだ目では、すぐ何【なん】でも目につきます」

と、こう、山の神さんに蛇が言うたて。

こいを側におって聞きおった蛙は、ムッとして、

「神様、私【あたし】の目は背中についていますけど、

私は立派【じっぱ】な後ろ足があります。

ほら、ご覧ください。

この立派な後ろ足で私は、ピャンピャン、ピャンピャン跳んで

お使いを果たすことができます。

蛇など足は見られませんじゃありませんか。

持っているか、持っていないか、全然ぬぺーっとしております。

この立派な見事な足をご覧ください」て言うて、

声高に自慢したて。

そいぎぃ、蛇はこれにムシャクシャして、

もう、言葉の終わらんうちにねぇ、

蛙の後ろ足からブルーッと、食べてしもうたて。

そいから先ゃ蛇はねぇ、蛙の足から食ぶっようになったて。

そいばあっきゃ。

[七二 蛙と蛇(類話)]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話P20)

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