嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかし。

親蛙【おやかえる】と子【こ】蛙【かえる】がおって、

とてもその子蛙が親の言うことをいっちょん聞かんじゃったてぇ。

そいぎぃ、お母さん蛙は、

「山」て言うぎぃ、その子蛙は、「川」て言う。

「川」て言うぎぃ、「山」て言う。

そういうことばっかいで、いよいよ自分が死ぬ時は、

山に埋めてもらいたいが、良う考えてみっぎぃ、

「山に埋めてくれ」と言うたら、川に埋むっじゃろうと。

そいぎぃ、

川に埋めてくれと言うたら、山に埋めてくるっばい、と思うて、

「お母さんはいよいよもう、死んごだっ【死ニソウダ】て。

「私が死んぎぃねぇ、川に埋めてくいやい【クレヨ】」

て、こう頼んだて。

そうすると、今度は言うことを聞かんば、と思うて、

河原の渕にお母ば埋めてやったちゅうもん、子蛙は。

今度言うこと聞かんば、と思うて、今度こそと思うて、

言うこと聞いたわけぇ。

そいで埋むっぎぃ、雨が降ると川の水が溢れて、

その上お母さんのお墓が

ひん【接頭語的な用法】流れはすんみゃあかあ、と思うては、

雨が降りだそうになれば子蛙は、ガアッガアッガアッ心配して、

雨の降りそうなたびたびに、心を使うて、心を痛めて鳴くそうです。

そいばあっきゃ。

[四八 鳶不孝]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話P16)

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