嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 烏【からす】のねぇ、

木の枝に油揚【あぶらげ】を咥えて止まっとったてぇ。

あったぎねぇ、狐もその油揚を大好きじゃったてぇ。

そいぎ狐は知恵者じゃんもんじゃい、烏さんにね、

「烏さん、羽が真っ黒できれいだねぇ」て。

「何【ない】て、そがんあなたの声も立派だのう。

ひとつ私も聞かせてくださーい」て、狐が言うたぎぃ、

「カアー」て言うたて。

あったぎねぇ、油揚をポトーイと、かっかえたぎぃ、

狐がもう、

「有難う」ち言【ゅ】うて、じきー咥えて、はって行たあーて、いうこと。

そいばっきゃ。

[四五 烏といん螻蛄(AT六)] (出典 蒲原タツエ媼の語る843話P14)

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