嬉野市上吉田 杉原英次さん(明40生)

 大阪の和泉南郡に信田の森てあっですよ。

そこにあの、私は聞いたのは、あの、

まあ、ハンサムな青年がおったらしいもんね。

そうしたら、狐が惚れてしもうて、

きれいな娘になって、その青年に近づいて行ったて。

そうしたら、その青年も娘に惚れてね、

狐の化粧とは知らじぃ、そいでまあ、結婚したわけじゃんもんね。

そうして、子供が生まれた。

しかしその、

「自分は、どうしても狐じゃから、この子をね、

母親ということはでけん」ち言うて。

そいで、その狐の嫁さんがね、あの、別るっわけですよ。

生まれしあなたは人間さま生みし私は狐の性(しょう)ち言うてね。

涙をふいて狐は、また信田の森へ行く。

そうして、会いたい時にはいっでもお出で私は信田の森におる

て、歌を残して紙に書(き)ゃあて。

そして、信田の森の元の狐の古巣に帰ったそうですね。

(出典 嬉野の民話 P76)

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