嬉野町東吉田 峰 マツさん(明26生)

 蛇さんが九十九晩、その娘の所に通って来たそうです。

それでね、、

「産前になった」と言うから、

「そん時ゃ、あの、あがんとは黒針に九十九晩生んだとば、

あの、針に抜(に)いて頭に刺せ」と言われていました。

若者(わかし)の頭に。

若者は立派(じっぱい)に結って来ていたそうですもん。

それで、あの九十九晩生ました尾が、ずうっと行って見たら、

岩ン下に、太か岩ン下にだけいたそうですもん。

「あいどん、あの、俺ゃあ九十九晩行たとっけん、

九十九、種ばつけとっけん、あの、後ばせわなし」と、

男が言っていたのを聞いて来らしたそうですもん。

「あぎゃんと、蓬餅と桃酒と飲むぎ下っ」と言っていたそうですもん。

それで、行って、このように刺したら、自分は逃げて、

その男が言っていたのを、聞いて帰らしたそうですもん。

そいぎぃ、今度(こんたび)ゃ、盥(たりゃあ)に湯を沸かして入れて、

舐めらせたら、九十九、生まれたそうですもん。

それでね、やっばり、そのようにしたと思って、

子は全部(しっきゃ)あ下ってしまったと、聞いていました。

だから、蓬餅と桃酒は由来があると。

(出典 嬉野の民話 P60)

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