嬉野町式浪 西野マサさん（明33生）
むかし、むかし。
猿と蟹がいたそうです。
二人は穂を拾って歩いて、餅を搗いたそうです。
猿が搗いた餅を蟹どんには、まったくあげないで、
穂は一緒に拾ったけれど、
搗いた餅は袋に入れて柿の木に上って行ったそうです。
そして蟹にはやらないので、蟹は怒っていました。
それで猿は、罰が当たって、ホテーンと餅と一緒に落ちたそうです。
その時、蟹はゴソッと、落ちた餅を持って、穴の中に入っていきました。
それで猿は、それをもらいたくて、その餅を食べることもできないから、
穴の中に入らないで、
「俺もいっちょくれんかん」と言ったそうです。
それで、蟹どんが、
「入って来ぇ。来ってけぇ」と言ったそうです。
猿どんが、
「尻から入ろうか、頭から入ろうか」と言ったそうです。
「尻からは入れ」と蟹どんが言ったそうです。
尻から入ったら、蟹から尻を挟まれて、
猿の尻は、あれだけ毛を取られてしまって、真っ赤になったと。
それで、猿どんは痛くて、
「毛くるけん、毛くるけん、放せ。堪忍せよ」と言ったそうです。
それで蟹のハサミには、猿の毛と似たとが生えていると聞いていました。
それまで【おしまい】。
（出典 嬉野の民話 P30）
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