嬉野町大舟 一ノ瀬寅六さん（明37生）
むかし、むかし。
猿どんと蟹どんと会（お）うて、田ン中の落穂ば拾うて、そして、
「餅ば搗こうかのう」と、話しんさったてぇ。
そいが楽しかもん。
そうして、拾うてきて、餅ば搗くだんになったとじゃろう。
そうしたところ、猿が餅ば持って柿の木に登ったてぇ。
蟹どんが下から、
「俺ぇにいっちょうくれんかん」て、言ったて。
そうしたら、
「いんにゃあ。欲しかろう、上がって食え、上がって食え」と、
言んしゃったが、上がりゃえんもん。
「家（うち）の母ちゃんだちゃあ、枯れ枝に上がって食いよらしたどん」
「あいば、俺（おい）も」と言うて、上がらしたところが、
ボッキー折れて、下さんちい落ちらしたてぇ。
そいぎぃ、蟹どんが、ゴソゴソ餅ば拾うて穴さん入（ひゃ）あらしたと。
蟹どんが中に入あっとんもんじゃい、猿どんが、
「尻から入あろうか。頭から入あろうか」と言うたら、
「尻から入あれぇ」と、言わしたぎぃ。そいぎぃ、
「尻から入あろうか」と言って、入ったら、
蟹どんが尻（しっ）ば、ねずみさったて。
そいぎぃ、猿の尻は真っ赤。
そいばっかい【それでおしまい】。
（出典 嬉野の民話 P30）
