嬉野町上吉田 江口小六さん(明38生)
墓ン中ゃで生まれてじゃろう。
毎晩出てねぇ、飴がたば買(き)ゃあや来て、
そしてあの、持って行きよった。
遅うは銭ば持たんじゃったらしかもんねぇ。
銭ば持たじぃ、あの、来たらしかもん。
そいぎぃ、
「貸(き)ゃあとけぇ」てじゃぃ、何てじゃい言うたろう。
そいぎにゃあ、おかしかよ、不思議かよと思うて、
ずうっと後ばつけて、あの、行かしたぎにゃあ。
あの、お寺の横っさいこう行たて。
そうしてあの、お寺の裏ン所(とけ)ぇ墓のあったちゃんもんねぇ。
そいで、そけぇ行たてから、もう、あの、スウーツと消えたけんばい。
そいぎぃ、ここんたいさい来て入ったごたったようと思うて、
あの、墓石ばこう、あげやんして見らしたないば、
そけぇあの、子の泣きでんしよったとかなんとか。
そういうふうな話は、聞いたごとあっごたっ。
そいけん、そいがあの、
やっぱい妊娠したとば埋めたもんじゃぃけんばい、
そいであの、そけぇ、墓ゃあ、
あぎゃんしてから生まれたていうあんばいじゃろうばい。
(出典 嬉野の民話 P82)