嬉野町大野原　朝日ヒデさん（明36生）

　むかし。

あるところに、猟師が住んでおりました。

ある日、猟師が山へ猟に行っていたところ、鶴が怪我をしていました。

猟師は心の優しい人で、その鶴の怪我に薬をつけてやりました。

そして猟師は、

「早う、何処さいじゃい逃げんば、誰（だい）からじゃい捕まえられるぞ」

と言って、逃がしてやったのです。

その日の夕暮れになってから、きれいな娘さんが来て、

「ここに泊めてください」と言って、やって来ました。

すると猟師は、

「ここは一軒家で、あばら小屋で泊むって言うたけんて、布団一枚でんなかけん」

と、言って断りました。

しかし、きれいな娘さんは、

「是非、泊めてください。行き先もありませんから」と言いました。

そこで、猟師は泊めました。

翌日、きれいな娘さんは、何処にも行きませんでした。

そして猟師に、

「私を嫁にしてください」と言って、頼みました。

猟師は、きれいな娘さんを嫁に迎えたのです。

ある日、嫁さんは、

「私が機（はた）を織（お）っ時は、決して見ないでください」

と言って、頼みました。

猟師は、「見ないでください」と、言われると、見たくなるもので、

嫁さんが機を織っている姿を覗きました。

すると、鶴が羽根を一本一本抜いて、織物を織っていたのです。

正体を見破られた立派な嫁さんは、

「もう私は、一緒に暮らすことはできません」と言って、

元の姿になって飛び去っていったそうです。

織物は高く売れて、猟師は金持ちになったと。

［大成　一一五　鶴女房］

（出典　嬉野の民話　P72）

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