嬉野町大野原 朝日ヒデさん(明36生)
むかし。
あるところに、お爺さんとお婆さんがおったと。
そして孫を寝せておった。
ちょうどその時、泥棒と狼がそこの家に来て、天井から様子をうかがいよったげな。
お爺さんとお婆さんは、孫を寝せつけながら、
「この世の中で、泥棒よいも狼よいも恐ろしかものがあったいね。
いちばん恐ろしかとは、古屋の漏りたい」と、話をしていた。
そこで、泥棒と狼は、泥棒よいも狼よいも恐ろしか古屋の漏りは、
一体どがんとじゃろうかあ、と思った。
その時、お婆さんが恐ろしそうに、
「それ、それ。今、やって来(く)っぞ」と言った。
にわか雨が降ってきて、雨漏りがポトリ、ポトリと、落ちてきた。
お婆さんは大きな声で、
「そうりゃ、やって来た」と言った。
すると、天井にいた泥棒と狼は、びっくりして一目散に逃げていった。
泥棒は木の枝に引っ掛かって、落ちてしまった。
狼は木の穴の中に落ちたげな。
そいばあっかい【それでおしまい】。
[大成 三三B 古屋の漏]
(出典 嬉野の民話 P40)