鳥栖市牛原町 林 ミサオさん(明43生)

 むかし。

お爺さんが山に行って、婆さんに、

「今から、山に行って来るけんで、留守番しとってくれんない」

ち言うてから、そのお爺さんは山に行った。

そしたら、山で狸が爺さんに化けてから、帰って来てから、

「今、帰って来たばい」ち言うたげなけんで、

婆さんは、爺さんが帰って来たと思うて、

婆さんは、米ば搗きよったち。

そしたら、狸が祖父さんに化けて、帰って来て、

そしてから、狸が、

「搗いて加勢するけん、少し開けてくれんかい」

ち言(ゅ)うて、爺さんが山に行く時、

「狸が化けて家に来たちても、絶対、俺が行ったら、

家ば開けちゃならんぞ」ち言(ゅ)うちゃりましたげな。

そしたばってん、

「ちいっと開けてくれんかい」ち言うもんじゃけん、

余(あんま)りせからしいけん、

「ああ、せからしか」ち言うて、開けなすったげな。

そして、狸が、

「私(あたし)が搗い加勢するけん、杵ば狸(うち)にやらんね」

ち言うので、やると、後ろの方の婆さんを

ゴットン、ゴットンついて、そして、婆さんをつき殺して、

おつゆの中に入れて炊いとった。

爺さんが山から帰って来て、

「今、帰って来たばい」ち言うと、狸が婆さんに化けて、

「狸汁ばたいとるけん、早(はよ)食べんない」

ち言うてから、婆さんを狸汁にして爺さんに食べさせたげな。

(西南大の資料)

[三二A 勝々山]類話

(出典 鳥栖の口承文芸 P47)

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