鳥栖市酒井東町  西山マサヲさん(明37生)

 爺さんと、婆さんが畑を耕して、

狸があの腰かけてからね、

「爺と婆と田打つは、左ぎゃあのホカベンション、

右ぃぎゃあのヨカンベンション」

ちゅうて、そん言うたげな。

そいけん、爺さんが、

「こん畜生」て、そんね、

追いかけてからそのなんば、

お狸さんば、捉(つか)まえましたげな。

そして、家帰ってから、檻のごたるとに入れてから、

「婆さん、婆さん。今日は狸汁ばするけんで、逃げんごつ」

て、言うたげな。

婆さんが米ば搗きよんなすったげなら、

「婆さん、婆さん。米搗いち加勢する、少し開けてください」

ち言うげなけんで、そうにゃ何べんでん、そぎゃん言うげなたい。

「せからしか」

しかーっと開けちくるるげな。

そすると、また、

「婆さん、婆さん。米搗いち加勢する、

まちっとばかり開けてください」

ち、そぎゃん言うげなけんで、

「せからしか。みんな開ける」ち言うて、開けたげなら、

「今度(こんだ)あ、狸が搗くけ」ちゅうて、そん、

「米ば、あたいがなんするけ」ちゅうて、

搗きよりましたげな。

そりけ、婆さんが横におって混ぜよったげな。

今度あ狸が、婆さんが頭ゴツーンて打ってから、

臼に、婆さんが、こう、つく時頭にゴツーンち、

そん杵ば当てたげなけ、婆さんが死にましたげな。

そりから、今度あ、狸がちゃーんと婆さんが着物ば着てから、

立派ん婆さんに化けてから、なんば、婆さんしたら、

ちゃーんと、そん狸になって、そん炊いとったげな。

そして今度ぁ、

「爺さん、爺さん。」て、帰って来たげなけ、

「爺さん、爺さん、今日はほんにおいしか狸汁ば炊いとる。

そいけ、食べてください。」

て言うたげなけ、食べよったげな。爺さは、

「こりゃあ、うまかね。」ちゅうて、食べたげな。

そしたら、一時してから、あん、

「あの爺は婆食うた。床の下の骨見ろ。」ち言うたげな。

そりから、そん爺さがびっくりして、床ん下見たげなら、

もう婆さん、骨んこうしてありましたげな。

そりばっかり。

(西南大の資料)

[三二A 勝々山]

(出典 鳥栖の口承文芸 P49)

標準語版 TOPへ