鳥栖市姫方町 前間スミエさん(大13生)

 むかしむかし。

あの、爺ちゃんと婆ちゃんがおったげな。

そしたら、あの、爺ちゃんな、あの、畑に行ったげな。

そしたら、あの、爺ちゃんが畑ばしよったら、

狸さんが山から出てきてね、あの、石に座って、

「爺が田打つは、左じゃあにゃあギッカンショ。

右じゃあにゃあ、ギッカンショ」

そぎゃん言うてから、あの言うけん爺ちゃんがね、

腹かいて追いかけ、また、しばらくしたら、出てきて、

またあの、爺ちゃんにそう言うて、悪口言いよったげな。

そしたら、あの、狸を捕(と)ろうと思うて、

あの、婆ちゃんに鳥もちば作らせて、その鳥もちば、

いつも座る石にべったりつけとったげな。

そしたら、あの、そればわからずにね、狸が出てきてから、

あの、座ってね、あの、尻もちついてから、

もうべっちゃりもう、鳥もちに捕られてから。

そいで狸を、あの、爺ちゃん家(うち)に持って帰ってね。

あの、婆ちゃんに、

「狸汁をしてくれ」ち言(ゅ)うたったでしょ。

狸ば吊る下げとったら所で、婆ちゃんな

米ば搗きよったげなら、あの、その狸がね、

婆ちゃんを騙してからね、

「もう、ちょっとでよか。

婆ちゃん、きつかけん、私が搗いてやるばい」ち言うて。

婆ちゃんはきつかったけん、とうとう縄ば解いてやったげな。

そしたらげな、その、今度婆ちゃんを搗いたちゅうですねぇ。

婆ちゃんを殺してから。

そしたら、お爺ちゃんが畑から帰ってきたらね、

そのお婆ちゃんに、その狸が化けて。

そいでから、お婆ちゃんの格好をしてから、お爺ちゃんに、

「お疲れさま」ち言うて、

お婆ちゃんの格好ばして出てきたげな。

そして、お婆ちゃんと思うてから、

「狸汁できたかーい」ち言う(ゅ)たら、

「狸汁のうまかとのできとっけん、早う食べんば」

ち言うてから、食べさせたげな。

そしたら、あの、食べてから、食べてしもうた後に、あの、

「縁の下のこれを見ろーう」ち、その、言うたげな。

そしたげな、爺ちゃんが見たら、婆ちゃんの骨があったげなち。

そいで狸汁じゃなくて、婆ちゃん汁を食べさせたげなちゅうて、

話ばしよった。

それから今度は、兎が、

「仇ばとってやる」ち言うてからね。

そしてから、兎は狸に、

「焚物(たきもん)拾いに行こう」ち言うて、焚物拾いに行ったて。

いっぱい焚物ば背中にかるうて、

「あんたが先に行くなさい」ち言うて、

先にやって、後ろから火をつけたて。

そしてから、あの、狸が火傷しとった。

そして火傷してから、膏薬ば持って行ってね。

あの、その膏薬が、唐辛子(とんがらし)の膏薬で、

火傷のヒリヒリしてね。

ようなっから兎が、今度はね、

「遊ぼう」ち言うてからね、あの、木舟と泥舟で行くらしかね。

とにかく遊びに行ってから、泥舟は沈んでしもうてね、

仇を討つたげなち言うて、ち話しよった。

[三二C 勝々山]

(出典 鳥栖の口承文芸 P61)

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