鳥栖市牛原町 羽根エンさん(明33生)

 むかし。

猿と蟹がな、川端で遊びよったげな。

ところがその、柿の種がぶっかんぶっかん流れてきよったげな。

そればその拾うて、植えて、

「まあ、太れ、太れ」ち言(ゅ)うて、水をやったりして、太って、

今度(こんだ)あもう、太って、

「なーれ。なーれ」ち言(ゅ)うてその、

可愛がりよったりゃその、生(な)ったげな。

それから、生ったけんで、ばってんあの、

蟹が登りきらんけんで、ちぎいきらんけんで、

猿をいうてきて、ちぎってもろうたげな。

そうしたとっが、猿が美味(うま)かとは自分で食べて、

渋かとばやりよったげな。

そうしたもんじゃっけん、蟹が腹かいてな、

降りたとっこば、尻ばちった、ねずうだげなち。そいけん、

「あ痛、あ痛、あ痛。あの毛くるっけん、毛くるっけん、離せ」

ちゅうてな、言うたけんで猿の尻は真っ赤で、毛がなかち。

その毛があの、山太郎蟹ち、太うか蟹で、

ここにゃ毛が生(は)えとりまっしょうが。

「あ痛た、あ痛た、あ痛た。

毛くるっけん離せ、毛くるっけん離なせ」ちゅうて、

言うたげなけんで、離(はに)ゃあたげなちゅうて、

話ば聞きよりましたな。

(北通広場 7)

[二四 猿蟹柿合戦(cf.AT九C)]

(出典 鳥栖の口承文芸 P32)

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