鳥栖市村田町 富 フサヨさん(明32生)

 島原の話じゃったですよ。

ある家に、きれいかお嬢さんとお母さんと何処かへ。

にわかに大夕立が来て、雨、風でとても一寸先も

歩まれんように降ったそうですよ。

それである家の軒先に、雨宿りしとんはさったら、

「そこへおったち、止まんけ、こっちへお入りなさい」

て言うて、家に入れて。

そして、雨が降るけ降って、

一週間位どうどう降るでしょうが、

そやもんで、とうとうそこにお世話になっとんなさる。

そこの息子さんとですね、恋愛して、

とうとうそこへお嫁さんにならっしゃったて。

そして、お母さんだけは、帰りなすったそうですもん。

そして、きれいな男の子を持っておんなさったら、

お母さんが、

「どうしても、ここにおられんけ、自分の帰らじゃだね」

そしたら、

「子供はそうするか」ち。

「子供は泣かんようにしておくけん」て、

奥さんがシッカリ頼んなさるけん仕方なく、そう言う風で、

「お前がぜんとも帰らじというな」ち、小さか息子には、

泣かんように龍の玉と言うとをですね、一つやって、

自分は帰りなさったそうですよ。

そしたら、おとなしく、その玉一つ持っていたら、

ほんにおとなしいそうですもの。

そしたら、そこの殿様が、その話を聞いて、

「龍の玉ちゅうとを、珍しいけん、そりゃあいっちょう、

その玉を取って来い」ちゅうた風で、でけんちゅうのを、

無理やりに取んなすったそうですよ。

そしたら、それからもう、子供がとても泣くそうですもん。

「島原の池の傍に来て呼べばよか」て言われとったそうですもん。

それで、そこに行ったて、

「お前がくれた玉は、殿様から取り上げられたけ。

子供がこんなに泣くけ、どげんかしょうがなかか」

て相談して、お母さんが、

「それじゃあ」て言うて、

「もう、この玉はどうでも取られんようにしとってください」

ちゅうて、くれぐれも言うて。

その玉を持って子供はおとなしくしとったら、そしたらまた、

「龍の玉ちゅうとは二つあるがほんなこつやけ」ちゅうて、

またそれも、取り上げられたて。

それでまた、池に行たて。そして相談しなすったら、

「もう、玉はなか」て。

それからが、また雨が降る降る、

七日七夜も雨、風でシッカ雨が降って、

一寸先も動かれんように雨が降ったそうですよ。

そしたら雲仙崩れって、雲仙山が崩れて、

(雲仙に四十八島ていうでしょうが、今日ですね。)

そして島ができたそうですよ。

そして、お母さんが取り返したじゃろう。

お母さんの目の玉じゃったそうですもんね。

(そげんな話を、

島原の雲仙崩れの話て、母から聞きました。)

(西南大の資料)

[一一〇 蛇女房]類話

(出典 鳥栖の口承文芸 P109)

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