鳥栖市牛原町 羽根エンさん(年齢不詳)

 あるところへ嫁に行ったと。

嫁さんは、どうしたことか顔色が悪くなって来た。

姑さんは嫁が心配になって、

「お前、この頃は顔色の悪かけん【悪いから】、どがな風かい?」と、

嫁さんに聞いた。すると、嫁さんは、

「はい。自分な屁ふろうごたっ。

そいばってん、屁ふられんけん、ぎゃん顔色が悪うなっとる」と姑さんに言った。

姑さんは屁ぐらいなことにと思いながら、

「屁どま、ふって良かばい。ふらんな」と嫁さんに言った。

嫁さんは、ホッとしたと言わんばかりに、

「そん時ゃあ、しっかり臼に、つかまっとって下さい」と言って、

「ブゥー」と大屁をひった。

そうしたら、臼はコロコロと転ぶし、棚の上の物は転げ落ちるし、もう大騒動じゃったげな。

そして姑さんは、

「げゃあな【こんな】嫁さんな、家にゃ、いらんばい」と嫁さんに言った。

嫁さんは、大屁のために姑さんに実家に連れ戻されて行っていた。

その途中、柿の木があった。

それには柿の実がたくさん実っていた。

ある人が、柿の実を千切ろうと苦心していた。

嫁さんは、その様子を見て、

「私が、ここで屁ふんなら、その柿は全部、落ちる」と言った。ある人は、

「そん時ゃあ【それでは】、いっちょ屁ふってみらんない」と嫁さんに言った。

それで嫁さんは、屁をひった。

すると、柿の実はすっかり落ちてしまった。

嫁さんは、ある人から褒美をもらった。

姑さんは、

「ぎゃん、良か嫁御は戻しゃされん」と言って、

嫁さんを、また連れて帰ったげな。

(出典 佐賀の民話第二集 P31)

標準語版 TOPへ