東川登町袴野 南 権平さん(明31生)
むかし。
麦蒔きじゃい行たとってぇ。
両人行たとってぇ。
そうして、あの、鷹が
パアーッとひっ掴(つか)うで持って走ったちゅう話なんたあ。
そいぎぃ、今度(こんだ)ゃあもう、大抵、捜(さぎ)ゃあて捜ゃあて、
何処まで持ってはしったかわからじぃ、
そいから今度あもう、その親は心配して、
大抵、確か、あの、三十年ぶりに
その子に行き当たったちゅう話じゃんもんなたあ。
そいがその、何処てぇろう行かしたいば、
「あの坊さんな鷹のさえずる子よ」と。
お寺の木に置(え)ぇとったろうごたっ。そして、
「あの坊さんな鷹のさえずる子よ」と、話ば聞いて。そして、
「わが子は、こういうふうじゃった」言うて、
三十何年ぶりにわが子に会わしたちゅう、
その話も聞いたごとあるですよ。
(出典 未発刊)