東川登町袴野 南 権平さん(明31生)

 むかしなたあ。

あつこの、朝日の、あの()(ぜん)()さんなたあ。

そん人のなたあ、野狐の産ば行たごとあると言う、もう実際、話ば聞いたごとあるどん。ぐっと昔、野狐の産に行たてぇ。

そいがその、立派(じっぱ)な姿でなたあ、何処てぇろう、

あがんとばお産のあろうごたっけん、来てくんさい、て言うごたっ風で。

そいぎ今度(こんだ)あ、あの()(ぜん)()さんが、もう明日(あした)百三十日じゃいなってきとんさっけん、

そうして行きんさったごたっさっすう。

そいぎぃ、ちょうどあすこの川上の、今の上んにきの、あつこは何てぇろう、

野狐のほんに騙すところのあったろうごたっなたあ。

そいぎぃ、そこさい連れて行たてぇ。

そうしてあの、今度(こんだ)あ、お産どん立派にして、そうしてあの、夜、

絹の布団着せとっちゅうもんなたあ。

立派な布団ば。

あったいど、こうすっぎぃ、こう目ば覚したりこまくり山ん(なき)ゃあ、あの、

()の葉ばグッスイ、あの、着せてくいとったてぇ。そうして、頭(もて)ぇ、(ぜん),

五円札ば()ぇとったてぇろうてぇ。

そや、やっぱいわが、そがんされとったてぇ、実際な話、

えて聞いたことあるたいなたあ。

(出典 未発刊)

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